こんにちは。タカヤマタクマです。
今回はクレーム対応の注意点について、オペレーター側と運営側の両面から問題を考えていきたいと思います。
あるクレーム対応方法の記事について
先日あるインターネットのニュースを読みました。
以下にそのリンクを貼りたいと思います。
あの「督促OL」が伝授 クレームや理不尽な要求への言い返し方 LivedoorNEWS
この記事ではクレーム対応について述べられていました。
ポイントはまず最初に謝罪してしまうと顧客との間に上下関係が成立してしまうので、最初から謝罪はしない方がいいということでした。
その代わりに「どうされましたか?」という言葉を返して、相手が優位でこちらが劣位という関係を成立させないというものです。
確かに頷ける部分もあります。客とコールセンターのオペレーターは上下関係ではありません。
そもそもコールセンターのオペレーターは、会社の窓口であって、個人として電話対応してるわけではありません。
要するに客と会社の関係です。
もし客が会社に対してクレームを言いたいのならば、こちらは会社を背負ったオフィシャルな立場として対応しなければいけません。
会社を劣位の立場に置いて対応することは、基本的に好ましくないでしょう。
まずは正当なクレームか不当なクレームかの切り分けが先
私は今回の記事の対応方法は、部分的に使える方法だと思います。ただ全面的に賛成ではありません。
なぜ違うかというと、まず正当なクレームと不当なクレームの選別が先だと思うからです。
多くの場合、初期段階では正当なクレームか不当なクレームかが判明していません。
その判断によってそれからの流れが全く違ってきますので、そこはしっかり切り分けないといけません。
まず最初の切り分けをしないで、謝罪なしで「どうされましたか?」という言葉を発するというのは、私には少しリスクが高い方法のように思われます。
なぜなら顧客は自分がクレームの電話をしたら、最初に謝罪の言葉が聞けると想定している場合が多いからです。
もし正当なクレームを言いたい普通の客だった場合、客のちょっとした気持ちに寄り添わないだけで、不要なこじれ方をしてしまうことがあります。
特に最初に客の感情が昂っている場合、一旦受け止めることが電話対応の基本です。
最初にしっかり客の感情を受け止める、たったそれだけでその後の流れがスムーズになります。
正当なクレームの場合、相手の気持ちをマネージメントする必要がありますが、最初の段階できちんと謝罪しておくことは、私は有効な方法だと思います。
もし客のクレームが正当なクレームの場合、きちんと謝罪して社内で適切に処理することをお約束できれば「状況も分かったし、今後気を付けてくれれば今回はいいよ」などと早期に終結する場合があります。
そのイージーモードで済む可能性を捨てては、とてももったいないと思います。
謝罪する場合の注意点
中にはこちらが謝罪したことに対して、会社が非を認めたという解釈をされてしまう場合があります。だから私は謝罪の仕方を工夫しています。
「もし弊社に不手際があったとしたら、たいへん申し訳ございません」と返します。
基本的に電話対応はほとんど録音されていると思います。
後でスーパーバイザーに電話対応が代わった場合、事前に録音を聞き返すことも多いと思います。
スーパーバイザーがその客との電話対応をした時に、さっきのやつは自分たちが悪いと認めたぞというようなことを、客が主張してくる場合があります。
いえいえそうではありません、録音を聞きましたが、最初の担当者は「もし弊社に不手際があった場合に申し訳ない」と申し上げただけです。
そう返答できるように予め録音を聞いて、予防線を張っておく必要があります。
逆に言うと、オペレーターは無条件の謝罪をせずに言質を取られないよう「もし弊社に不手際があったとしたら」という枕詞を付けておきます。
私はこれを条件付き謝罪と呼んでいます。守り固める時に有効です。
基本的にはクレーム時は正当でも不当でも、守りを固めることが基本です。言葉遣いはいつも以上に丁寧にします。
基本的に相手の話をよく聞くことを重視します。
中には話を「話を聞いてくれたし今回はいいよ」と終わってしまうことも多いからです。
下手に相手の話を遮って、正論ばかり言っていると話がこじれてしまうものです。
基本的な考え方としては、ひたすら守りを固める、時間をかけて丁寧に話を聞くというのが正当なクレームに対する対応方法です。
ハードクレーマーの場合の注意点
しかし不当なクレームであることが判明している場合は、ある程度最初から断固たる対応をすることが必要な場合があります。
ハードクレーマーだと社内で周知されている客の場合も同じです。
早い段階で防衛線を引き、その防衛戦から一歩も退かないということを、相手に分かってもらう必要があります。
不当なクレームの場合は、最初から話し合っても無駄であるということがはっきりしていますから、相手の気持ちを必要以上に受け止める必要はありません。
ハードクレーマーの場合は、相手の感情負担を考慮する必要がないので、相手の話に矛盾やおかしなところがあれば、そこを丁寧に何度も突いていきます。
もちろん言葉遣いは丁寧にしなければいけません。
できることしかできないしできないことはできない、そう割り切ってビジネスライクに徹するようにしましょう。
またハードクレームだと判断したら、なるべく早い段階でスーパーバイザーに知らせるようにした方がいいと思います。
知らせる方法は手を挙げるとか、何か社内のコミュニケーションツールを使うなどでもいいと思います。それは予め決めておくといいでしょう。
できたら早い段階でスーパーバイザーがその電話対応をリアルタイムでモニタリングするといいと思います。
その上で指示を受けるといいでしょう。オペレーターはスーパーバイザーから指示されたことは、なるべく忠実に実行します。
もし折り返しにできたり、電話対応を交代するように言われたら、すぐにスーパーバイザーに判断を仰ぎます。
私は早い段階からそうなるように調整しながら対応しています。
基本的に多くの会社に対するクレームは、オペレーターの範囲を超えていることが多いですから、オペレーターの段階で話を聞いていてもどうにもなりません。
スーパーバイザーでの対応
スーパーバイザーはもっと権限が大きいので、無茶なクレームをつける客に対して時には強引に解決に持っていける場合もあります。
たとえば「もしお客様が弊社にそうしたサポートをお求めならば、弊社では対応いたしかねます。それについてご不満がおありでしたら、後で解約担当からご連絡をするように手配致します」などと言える場合もあります。
相手の脅しが強い場合は「今後の対応策については、顧問弁護士や法務と相談の上で対応を検討させていただきます」などと言うこともあります。
特に解約したくはないが、何らか特別な計らいをしてほしいだけの客の場合、解約する方向でこちらが動こうとすると、とても嫌がるものです。
もちろんその裁量がないのにそんなことを言うと後で問題になるので、いざという時のスーパーバイザーの権限については、事前に定める必要があります。
また更に上に代われという客もいますから、それをお断りできるようにしておくといいでしょう。
スーパーバイザーが対応できないのに、普段その仕事に不案内な上位管理者に電話を代わっても、上位管理者も困るだけです。
どこかのタイミングで一応報告は入れておくといいと思いますが、その時に電話対応を代われと言われたけど断っていいですかと、予め了解を取っておくといいと思います。
「この件については私が最終的な権限を与えられておりますので、ご要望にはお応え致しかねます」などと言うと、客は最初は激怒するものの徒労感を募らせます。
もちろんそこまでやる場合は、最初からハードクレーマーであることが確定しているケースです。
早めにスーパーバイザーを巻き込むと、上ではオペレーターよりも解決できる可能性が高いので、早期に問題を終結できる可能性が高まります。
逆にいうと現場のクレームについてはスーパーバイザーにきちんと一任できるように、普段から組織体制を整備しておかなければいけません。
スーパーバイザーへの権限移譲だけでなく、法務や顧問弁護士への相談するフローをつくったり、訳ありの客を問題ない形で解約できるように契約内容の整備、そして特殊な解約の事例を処理できるスキームを準備しておくといいでしょう。
私はクレーマーに対して今後自社のお客のままでいないように、問題が表面化した時点でしっかり排除できる仕組みづくりが大切だと思います。
クレームに対しては組織的な対応が基本
私はクレームの対応はオペレーターの段階で全て解決しないように考えることが、とても重要だと思います。
もし今回のように初期段階での謝罪を避ける運用をするには事前にそういう体制づくりをしておく必要があると思います。
オペレーターに心理的に負荷がかかることが予想されるので、組織的にそういう対応をすべしというバックアップする体制を整える必要があります。
そうしないとオペレーターが孤立して矢面に立ってしまいます。
「さっきの奴の対応はなっていなかった、謝罪の一言もない」と言われた時に、「なんでさっきはあんな電話対応をしたの」と上司から言われたら、オペレーターの立場がありません。
判断の権限もないまま不当なクレームの対応をさせられて、ちょっとした細かな判断ミスを揚げ足を取られたことが原因で辞めていったオペレーターを、私は何人も知っています。
クレームの前線でオペレーターが武器がないまま単独で戦う状況を放置してはいけません。
もしこの記事のように早い段階で謝罪を回避する副作用が大きそうな電話対応をする場合、必ず組織としての意思統一をはっきりさせておき、オペレーターの教育にも反映させるべきです。
そういう整備ができていたら、オペレーターはより自信を持ってクレームに対応できるようになりますし、クレーム起因の離職も少なくなると思います。
このインターネットの記事を書いている榎本まみという人の話で私がすばらしいと思ったのは、オペレーターの心を守る、そこを重視してるところです。
私も同じ問題意識もありますし、そう思えるコールセンター関係者が増えてくればいいなと切に願っています。
今回のニュース記事を読むにつけ、やはりクレームはオペレーターではなく組織としての対応が必要だという思いを強くしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。